「冬になったら」
今日は肌寒い。昨日まではそこそこ暖かかったのに、もう随分と冬めいてきたもんだ。風邪をひかないように気をつけないと。
体のためにも(?)寒いところにはなるべく行きたくないな。
「ねー、ねね!ニンゲンしゃん!」「どうした?」
「ふゆ て なに?」「これから来る寒い季節のことだよ。」
「しゃむいのー?」「そうだな。」
「寒いと多くの草花が枯れたり、雪が降ったりと、この星に暮らす生き物にとってはかなり厳しい季節なんだ。」「……ん。」
「ね、ニンゲンしゃん。」
「ニンゲンしゃん、ちなない?」
「寒さくらい平気だよ……っくしゅん。」
「ほんとにだいじょぶなの?!ねー!」
「だいじょぶだって。風邪ひいてなくてもくしゃみくらいするから、な?」「ほんと……?」「大丈夫だよ。」
心配そうな瞳で見つめられるとなんだかドキドキする。
「だって、ボクね、びょーきでいらないされちゃったから、とってもこわいの。びょーき、やだやだなの!」
「そうだな。でも、自分は風邪引いても死なないし、お兄ちゃんにはすごい弟もいるだろ?だから大丈夫だ。」
「よかったー!」
「でも、冬は子どもの喜ぶイベントもあるんだよ。」「なあに?」「クリスマス、って言ってな、いい子にしてたらサンタクロースからプレゼントが貰えるんだ。」「ぷれぜんと?!」
「ボクもぷれぜんともらえる?」「きっとな。」
「そういや、お兄ちゃんは何が欲しいの?」
「えとねー、んー……。」
「欲しいもの、ないのか?」「んーん。いぱーいある。」
「ボクはねー、もういっかい、おとーしゃんにぎゅーってちてもらいたいの。」「……そっか。」
「でもねー、ボクね、ニンゲンしゃんといっちょだからいいの!だって、ニンゲンしゃんはいつもぎゅーちてくれるでちょ?ボク、ニンゲンしゃんがいるの、しあわちぇ!だいしゅき!」
「そうかそうか〜。よしよし。」「えへ、なでなでもちてくれるのー!ボクもぎゅーとなでなで!おかえち!」
いいこいいこ。……自分もこんな風にされたかったな。
「ね!ふゆになったら、なにしゅるの?」
「他には……雪遊びとか、初詣とか、あとバレンタイン?……あんまり縁ないけど……。」
「ふゆ!たのちみ!ニンゲンしゃんといぱーいあしょぶ!」
「よし、これからちょっとずつ冬に向けて準備しようか。」「ん?」
「冬といえば、まだあった。」「こたつを出そう。」
「こたちゅ?」「そう、こたつ。」
「今から組み立てるよ。」「おてちゅだい!」
小さい子にこたつの組み立ては難しいだろうから、とりあえずこたつ用布団を持っていてもらった。
「よーし、完成。」「わー!」
「これがこたつ。」「てーぶるにおふとんついてるのー!」
「ここに入るとな……。」「んー?」「出られなくなるんだ。」
「えっ……?」「とりあえず入ってみて?」「や!こわいのー。」
「怖くはないから安心して。」「えー!」
怖がりながらこたつに入る。
「あ!あったかい!ふわふわ!」
嬉しそうに寝転がりながら遊んでいる。
そのうち眠くなったようで、いつのまにかそのまま眠ってしまった。遊びながら寝るなんて、子どもらしいな。
そんなことを考えているうちに、気づけば夕暮れになっていた。
冬になったら、何をしようかな。
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
そして、構造色の少年の名前と正体が分かったよ。なんと彼は、父が考えた「理想の宇宙管理士」の概念だった。概念を作った本人が亡くなったことと、ボク以外の生きた存在に知られていないことで、彼の性質が不安定だった原因も分かった。
ボクが概念を立派なものに書き換えることで、おそらく彼は長生きするだろうということだ。というわけで、ボクも立派に成長を続けるぞ!
─────────────────────────────
11/18/2024, 9:50:08 AM