ゆじび

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「風と」


冬の風は冷たい。
冬の風は暖かい春の始まりを告げる。
夏の風はひんやりしている。
夏の風は冷たい秋を、夏の終わりを告げる。

母さん。
元気?俺は元気。
あの一年は俺のなかで、一番母さんの側に居れた
かけがえのないものになったよ。
母さん。
今どこにいるの。
いつ、会いに来てくれるの?
いつまで待てばいいの?
母さんが消えた夏の風は夏にしては、冷た過ぎたよ。
僕の心が冷めきるのには十分だった。

父さん。
父さんの顔は今じゃ思い出せないよ。
でも、母さんが貴方って泣いている姿は僕の目に焼き付いているよ。
父さんも母さんも俺が好きだっていうなら一度くらい
俺の前に帰ってきたっていいじゃないか。
顔も覚えていない人に会いたいなんて不思議な気持ち。でも俺は父さんに逢いたいよ。

母さん父さん。
どうして俺を捨てたの。
どうして消えたの。
俺は死ねなかった。
二人が俺を守ってくれたのに。
俺が死ねば良かったのに。
守ってくれたのに俺は死にたいって願ってしまうの。
俺を置いてどこかに行かないで。
俺を置いて逝かないで。
俺はいつまで耐えればいいの?
俺はいつ死んでもいいの?




私たちの可愛い息子。
元気?私達はあまり元気じゃないわ。
我が子が死にたいって思っているから。
貴方にとって私達の命はそんなに軽いものなの?
私達の分まで生きろなんて言わない。
から、せめて死にたくない。って言ってくれない?
貴方が一度くらいそう言ってくれるなら私達も死んだ
かいがあったってものよ。
私達は貴方を守って死んだ。後悔はないわ。
でも、そのせいで貴方は責任を感じているのかも知れないわね。
正直私達だって死にたくなかった。
でも、貴方を守りたかった。
今でも考える事があるわ。
あの時少しでも三人が助かる方法を考えていたらもしかしたら。って。...後悔 してるかもね。
   こんなこと言っているけど生きててくれるなら私達の事なんて忘れてもいいわ。
だからとにかく諦めないで。
この先、生きていたらいつか貴方の全てをかけて守りたい存在ってものが分かるから。
幸せになりなさい。
私達は十分幸せだった。
旦那と出会えて、そして貴方に逢えた。
全部奇跡みたいな事なの。
死んでも切れない絆があるの。
..まぁ沢山の事を言ったけど結局私達が貴方に伝えたいことは一つ。


生きて。ダサくてもいいわ。
誇りを持って生きなさい。
そして自分が満足して、やり残した事がなくなったら
私達に逢いに来て。
遠い未来の話でしょうけど。



母さん父さん。
また、夏がきましたよ。
生暖かい風が吹いています。
もう少しすると冷たい風が吹いて来ます。
やっぱりこの時期になると大切なものが消えていってしまいそうで少し、怖いです。
でも今年はあの日の出来事が乗り越えられる。
そう思います。
新しい一歩を踏み出すとは、ドキドキして胸が痛い。
でも心が踊っています。
怖い、苦しい、悲しい。
乗り越えなければならない事が沢山あります。
だから、応援していてくださいね。

これから頑張るので、今は思い出に浸らしてください。頑張るのはその後でも遅くないでしょう?

一歩踏み出す事は難しいです。
でも振り返って見ると、確かに自分の足跡があるのです。そうやって生きていくんです。

そろそろ踏み出す時が来たのでしょうか。
ゆったりやっていきます。
それが俺ですから。

風のように。
風と同じように。
風と季節を時を刻んでいきます。
二人のように立派になるのです。

5/2/2025, 3:51:40 PM