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「あの人は…生きて…、生きているんですよね、?」

そうやって、僕に尋ねてきた君の体には
痛々しいほどに、包帯が巻かれていた

そして、失った片腕…、

僕はそんな彼女に絶望を味あわせたくなかった

"生きている"
そう伝えた瞬間、張り詰めていた緊張がとけたみたいに
安堵したのが伝わってきた

どこにいるのかと、尋ねてくる君に僕は…、
いくつの嘘をついたのだろう


どれだけ、バレないようにしていても
嘘はやっぱり、いつかバレるもの…


「どうしてっ…!?生きていると……、生きていると
おっしゃいましたよね…!?」

瞳に涙をいっぱい溜めて、僕に訴えかけてくる


その時、僕は初めて思い知ったんだ
やさしい嘘のつもりだった

でも…、
彼女にとっては、あの日…、あの時に伝えていた方が
傷は少なかったのでないか

僕が彼女に、生きているという希望をあたえてしまった

僕が、彼女にこんなにも重く、辛い悲しみを
あたえてしまった

これまで、彼女は生きているという希望を胸に
生きてきた

それを近くで見てきた僕が一番よくわかっていた

走っていく彼女に、かける言葉もなかった

やさしい嘘のつもりだった、
彼女のためを思ってついた嘘のつもりだった


いや、違うか…
全部、僕の自己満足だったのかもな…、


1/25/2025, 4:05:22 AM