SIRO

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 雨上がりの午後、公園の池にかかる小さな橋の上で、少女・彩葉(いろは)は足を止めた。空にはくっきりとした虹が架かり、その七色が水面に映っていた。

「きれい……」

 彩葉がつぶやくと、隣にいた祖母が優しく微笑んだ。

「虹はね、不思議なものなのよ。昔、おばあちゃんはこの橋で“七色の奇跡”を見たことがあるの」

 彩葉は目を輝かせた。

「どんな奇跡?」

 祖母は少し昔を思い出すように目を細めた。

「あれは、私がまだ若い頃。ひどく落ち込んで、この橋でぼんやりしていたの。でもね、ふと見上げたら、大きな虹がかかっていてね。その時、不思議と心が軽くなったの。まるで、虹が私の悲しみを連れて行ってくれたみたいだった」

「……じゃあ、虹を見ると幸せになれるの?」
「ええ。七色の光には、人の心を癒す力があるのかもしれないわね」

 彩葉はそっと目を閉じた。やがて目を開けると、空の虹が、まるで優しく微笑んでいるように見えた。


お題:七色

3/27/2025, 7:41:53 AM