夏は、晴れて社会の一員となった俺に、学生の頃とはまるで違う顔をしてやってきた。
今年の暑さは目も眩むほどで、多忙な毎日に疲れ切った体をじりじりと蝕んでいく。その時点で俺の心身は限界なのに、周りの社会人たちはいつも通りの速さで動いている。
今や思い出となった、夏祭りの喧騒、花火の煙の匂い、セミの鳴き声、目が焼かれるような夕焼け――全てを届けてくれた夏は、もう俺の前に現れてくれない。
そのことを思うと、無性に悲しくなった。
「…嫌いだよ」
無意識に口から漏れ出た言葉。
この日々も、この暑さも、それが変わっていくことも、嫌いだ。
失って、大人になる。時間が過ぎ去って、何か一つを気づかぬ内に失くしたまま成長していくのが、珍しくもない世の常のこと。
大変な日々でも、その一日は二度と返ってこない。夏は過ぎ去るのを待ってはくれないみたいだ。
6/28/2024, 11:31:59 AM