暁星

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「女の子は結婚するまでは大切な借り物、大事に育てないといけないのよ」
そんなことを幼い頃の私に、母はよく言っていた。
「あなたのせいで、私が悪く言われるの!早く泣き止みなさい!私が泣かせたと思われるでしょ!これは、あなたの為にやっていることなの!」
そう怒鳴りながら、私が泣き止むまで叩いた。だから、嗚咽を堪えて早く泣き止まないと、焦るほど泣くことを止められない。
今思えば、感情なんてそう簡単にコントロールできない。そしてこれは、幼少期から小学生まで続く。
きっと傍目から見ても虐待だけど、私は『私の為にやっている』という言葉の呪縛によって、つい最近まで『私が泣くから悪い』と思っていた。
母も祖母に食事を与えられず、栄養失調で入院するほどの虐待を受けていた。だから母も母親がわからなかった、そして優等生の母は完璧な母親になろうとして壊れていく。
「辛いの……もう私のこと、お母さんと呼ばないで」
まだ私も幼かったけど、もっと幼い妹はもっと辛かったはず、その日を境に私たちは母のことを『硝子さん』としか呼ぶことができない。


こんな環境で育った私たちは、誰も結婚願望なんて持たなかった。いや、子供を育てたくても母と同じことをしてしまう恐怖が勝っていたのが本音。
人生とは不思議で私は結婚、そして母となった。

私の中で子育てをするときのルールがある、それは自分がして欲しかったことを娘たちにする。
手を繋ぐ、抱き締める、一緒に遊ぶ、笑い合う、抱っこをする、頭を撫でる、そして褒める。
私は子育てをしながら、自分を育て直しているのかもしれない。



『蝶よ花よ』

8/9/2023, 10:25:58 AM