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誰よりも、ずっと


緑は目に優しい色なんだよ。
そう僕に教えてくれた彼女はもういない。

1年前のあの日、僕はいつものカフェで彼女を待っていた。普段遅れることない彼女が来ないまま15分がたっていた。
メッセージを送ったが返事はない。

僕は特に驚かなかった。彼女は来ない気がしていたのだ。喧嘩をしたわけでも別れ話をしたわけでもない。前回のデートは植物園で、ふたりできれいな花や珍しい植物を見て回った。
その帰り際、ひときわ大きな木を見上げながら彼女は言ったのだ。緑は目に優しい色なのだと。

彼女の横顔を眺めながら、この顔を見つめるのはこれで最後の予感がした。なぜと聞かれても答えられない。
しいていえば彼女はもっと派手な色が好きだったから。
優しい緑では満足しない激しい心を抱えているのが見て取れたから。

誰よりもずっと彼女に優しくありたかった。
たとえそれが彼女の望む色ではなかったとしても。

4/9/2024, 12:33:43 PM