『随分と軽んじられたものだな』
きっとここが本の中の世界だったら、私のために怒ってくれる救世主でも現れたかもしれない。よくある台詞で、よくある都合のいい場面で、かっこよく現れ私を連れて逃げてくれるベタな展開で、私は救われる。
目を閉じているうちはそういうありもしない夢物語に浸っていられる。暗いだけの瞼の裏に都合のいい仮装現実を映し出して、まるで本当のことのように錯覚し酔いしれる。
でもね、時間がきたら朝日が閉じた瞼さえ無視して明るく照らして、うるさい声やアラームが鳴り響くから強制的に現実へと引き戻されるのだ。
そのときの絶望なら誰しも経験はあるだろう。
全てが思いのままになる世界から叩き落されるの。
本来なら救世主が吐く冒頭のような台詞を、敵が保身のために私が悪いことをしたと言い訳するために使われるんだ。
まただ。また私を殴る大義名分にされた。
「軽んじてるのはお前だろ」
なんてバカバカしい世界なんだ。厨二病でもなんとでも言えばいいさ。暴力でしか自分の欲を満たせないお前らなんかよりずっとマシだよ。
【題:落下】
6/19/2024, 8:01:48 AM