どらもっち

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落ちていく


カーテンを開けると酷く空が曇っていた。どうやら今日は雨らしい。
充電ケーブルに刺さったままの携帯電話を使って天気予報を調べる。外にはもう既に雨音が聞こえ始めているのに。何故だか自分で調べて "今日は雨だ" という確証が欲しくなる。そんなことしたって何の意味もないのに。
目で見ても耳で聞いてもやはり今日は雨だった。

雨だから憂鬱、というのは外に出る用事があればこそだ。小さく狭いこの部屋から飛び出す予定もなければ、雨音は心地良い。世の中とは隔離されているみたいで、全てが他人事のようだ。
天気予報を調べ終えると、無意識で開いてしまう小さな水槽のようなスペースは、幸せや不幸せな情報がすごい早さで泳いでいる。
今日だけは自分とは関係ないと思いたい。

意識が流されていくように視線を窓へ向ける。ガラス一枚隔てて見るだけで、自分のスペースを認識する。心は窮屈だと感じる。息苦しさは、マスクやアクリルがないと他人とは接する事が出来ないみたいに。と同時に息苦しさの中に安心も覚える。きっとこれは言葉にしてはいけない、と錯覚させる。心は荒んだのだろうか。

雨粒が窓を伝って落ちていく。ガラス越しに指でつついても、そのペースは変わることなく自分の早さで落ちていく。それを美しいと思う。きっとまだ大丈夫なんだろう。
「そっか雨なんだよな」
誰もいない部屋に放ってはみるものの、透明になって吸い込まれていく言葉。静寂を守る時間に嫌気が差した。
深く潜る為に瞼を落とす。カーテンは開けたままで。

11/23/2022, 12:54:19 PM