kiliu yoa

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 疾うの昔の話しである。

 私の父には、多くの側室がいた。全て、政略結婚だった。富豪の娘に、上級貴族の娘、大臣の娘…など、有力な家ばかりとの繋がりを持つためだった。
 彼にとって婚姻とは、その家の力と弱みを握る手段でしか無かった。

 そんな彼は、遂に正室を迎える。その女性は、階級の中でも最下層の出だった。当時には珍しい、恋愛による格差の結婚だった。そして、彼は正室の彼女しか、生涯愛さなかった。彼から唯一、寵愛を注がれた女性。それが、私の母だった。

 多くの側室が居れば、子も多い。私には、腹違いの多くの兄と姉が居たが、正室の子の私が嫡男となり、家督を継ぐこととなった。

   つまり、そう…。感の良い方はお気づきの事だろう。

     私の子ども時代は、地獄と化した。

  私が幼少の時に、母は病に伏し、若くして亡くなっていた。

 そんな地獄にも、希望があった。一部の兄弟が、私の味方に付いたのだ。

  それにより、勢力争いを勝ち抜き、生き残ることが叶ったのだ。

 兄弟たちが隣国に嫁いだ、その後も文通による交流は続き…、その兄弟たちとは、再会の約束を取り付けることに成功した。

 
待ちに待った今日、ドアのベルと再会を喜ぶ、音が玄関ホールに響き渡った。
 

 





 

 

8/28/2023, 3:02:12 PM