言い出せなかった「」
「あぁ、僕は優しいからね」
「あいつとは違う」
「一緒にしないでくれないかな」
それを見下ろして僕は笑う。
拘束具でがんじがらめのそれは、ただ震えていた。
「なにか言おうとしているね」
「でも君には何も言わせないよ」
「必要も無いからね」
…大丈夫。
あいつが生きていないことくらい、知っているさ。
口の端を無理やりつり上げる。
「さぁ、始めようか。」
震えるだけのそれに手を伸ばす。
知っている。
分かりきっている。
それでも知りたかった。
…あいつは喜びそうだな。
――あぁ、とても嬉しいよ。
「気持ち悪いんだよ、お前」
あいつが笑った気がして、僕は顔が少し引きつった。
僕の手は、あいつが好きな音を奏で始めた。
それは醜く削がれていく。
あいつは僕がこうなるのを知っていただろうか。
9/4/2025, 11:43:07 AM