霜月 朔(創作)

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二人だけの秘密


私の掌の上には、
傷だらけの指輪が一つ。

鈍く光る指輪の内側には、
懐かしい君のイニシャルが、刻まれてる。
まだ、君と私が恋人だった頃の、
ペアリングの片割れ。

私と君の関係は、世間的には、
決して褒められる事ではなかったから。
お揃いの指輪を買っても、
堂々と指に嵌める事は出来ない。
それでも良いからと、
無理に買ったペアリング。
それは、切なくて甘い、二人だけの秘密。

だけど。ある日、君は私の元を去り、
私と君は、只の同僚に戻った。

あれから、年月が経って。
今は、あの頃と違って、
お互い立場もあるし、守るべきものも出来た。
だから。
私が幾ら、あの頃の関係に戻りたいと願っても、
叶わない事は、嫌という程分かってる。

それでも。私は。
今でも『二人だけの秘密』の片割れを、
棄てられずにいるんだ。

5/3/2024, 3:53:06 PM