冬空の星
吐いた息が白くなるような寒い夜。
彼女はマフラーに埋めたその鼻を赤くしながら、目を輝かせて夜空を見上げていた。
「やっぱり冬の星は綺麗ね!」
幼子のようにはしゃいだ声をあげる彼女の手をそっと握る。手袋をしていないその手は氷のように冷たかった。
「手袋はどうした?」
「家に忘れた……」
「………」
誤魔化すように笑った彼女の右手を繋いだまま、その手をコートのポケットにいれる。驚いたように息を呑む彼女に俺は目を向けないままで呟く。
「帰るぞ。風邪をひかれたら、困る。星の観察は家でも出来るだろう?」
「あははっ。それもそうだね」
俺と彼女は訪れていた公園を後にする。
「着いたらラテを用意しよう。砂糖とミルクはたっぷりだな?」
「うん!君の作るラテは甘くて美味しいから、好きだなぁ〜」
「ふふ。そうか。今度は、あたたかい春に星を見にこようか」
「そうしよう!でも、冷えるかもしれないから温かい飲み物も用意しようよ」
「そうだな。今から考えるだけで楽しみだ」
「そうだね〜。君と一緒なら何をしても楽しいよ」
彼女の無垢な笑顔に、俺も釣られて微笑んだ。繋いだ手はそのままに俺たちはゆっくりと家路を歩く。
明日も、その次も、ずっと彼女と共にいられることを願いながら。
10/6/2023, 12:39:04 AM