"花咲いて"
「お。」
聖都大学附属病院の中庭を歩いていると、数日前来た時はまだ蕾だった花が綺麗に咲いていた。
「無事に咲いたんだな。」
「みてぇだな。水滴が付いてっから、水を貰ったばかりか。」
そう言って花に近づき、花の前でしゃがんで咲いた花を見る。
「綺麗な青色だな。」
すぐ斜め上から声がして、驚いて声の方を向くと鏡がいつの間にか隣に立って花を見ていた。
「…あぁ。けど見た事ねぇ花だな。」
スマホを取り出し、検索バーのカメラマークをタップして目の前の、名前の知らない花を撮り画像検索する。
「なんて花だ?」
「"アガパンサス"だってよ。」
──へぇー、こんな花もあんのか。
そう思いながらスマホを仕舞い、目の前のアガパンサスを見る。紫陽花の様に幾つもの小さな花がひと塊になって、花弁はそれぞれ6枚で小さく細長く、鮮やかな青色を纏って咲き誇っていた。
「…可愛くて、綺麗だな。」
ボソリと率直な感想を述べる。小さくも綺麗に咲き誇る姿を見ていると、自然と口角が上がり顔が綻んだ。
──うちでも育てよう、必要なもんとかねぇか調べねぇと。あと帰ったらある程度耕してスペースを作らなきゃな…、種とか苗を買うのはその後だな。
などと思考の海に浸っていると、
「そろそろ昼時だぞ。」
急に声を掛けられた。驚いてスマホを再び取り出して時計を見る、正午近くを表示していた。
「あ…そうだな。昼飯どうすっかなぁ…。」
そう言いながら立ち上がり、昼食を何にするか考える。
「なら一緒にどうだ?」
「え、いいのかよ?」
「あぁ、何が食べたいかリクエストはあるか?」
「は?いや、んな事急に聞かれてもなぁ…。」
「気分でいい。和食か洋食か…、どんな物が食べたい?それに合わせよう。」
「俺に合わせんのかよ。…気分かぁ、それなら──」
2人並んで本日の昼食について話しながら花壇から離れていった。
7/23/2023, 11:12:09 AM