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本気の恋


「……好きです、先生」
震えたその声が、ふりしぼったその勇気が、どれだけ本気なのかを物語るから。泣きそうな私とは裏腹に、驚くその人を見て、下手くそに笑う。
「結婚、おめでとうございます。……私、先生のこと大好きだから、嬉しい」
付け加えた言葉たちが、本当を、まるで冗談かのように塗り変えていく。照れくさそうに微笑むその人に手を振って、足早にその場を去った。
皆が皆、その恋はまやかしだと言った。あまりにも愚かだと、それは恋ではなく憧れだと。誰もがそう言ったのだ。
それでも、あの人だけは違った。
私のくだらない恋の話を聞いて、あの人だけは優しくこう言ったのだ。
「そうかぁ、……それは素敵な恋だね」
すくいあげられた心がようやく息をしたような気がした。
今ならよく、わかるんだ。この恋がいかに愚かで望み薄だったか。
でもね、ちゃんと本当に、本気だったんだよ。だって、今もまだこんなにも、痛い。
ああ、でもね、決して無駄ではなかったから。キラキラと輝いていた日々も、こんなにも痛い胸も、全部全部私のものだから。
おめでとう、って今度はちゃんと笑顔で言うんだ。

9/12/2023, 1:29:20 PM