『飛べない翼』
動物園の檻の中に鋭い目をした鳥がいた。鋭いのは目だけではなく、黄色い爪もくちばしも鋭く尖って格好良い。鳥の説明が書かれたプレートには彼の暮らしていた国やどういうものを食べるのかという生態が書かれていたのだが、今の状況と違う一文に目が留まる。
“雄大に空を飛び回る姿は空の王とも呼ばれる”
檻の中に佇んでいた鳥はおもむろに翼を広げ羽ばたかせた。翼には不自然に切られたような箇所がいくつもあり、その身を浮き上がらせることすらもできないようだった。
「空の王にならせてくれないか」
鳥はまっすぐにこちらを見て話しかけてきたけれど、私にはその力も権限も備わっていない。視線を振り切って檻の前をあとにしたが、背中には鋭い視線がいつまでも突き刺さっているかのようだった。
11/12/2024, 3:35:48 AM