「若いっていいね...」
葉瀬(ようせ)ちゃんとの帰り道、私は二十代になったばかりであろう大学生男女が仲良さそうに歩いているのを目にした。
「秋(あき)も若くなーい?」
「いやいや、もう三十だし。若くないよ」
「そう?もしそうだとしても、秋は若いっしょ」
とサラサラと口にするのは、彼女がまだ二十代になったばかりだからなのかな。
「若く見えても、もうあんな風に恋愛できないかな」
「......秋って拓也(たくや)と付き合ってるんじゃないの?」
突然彼女はそう尋ねた。
「えっと...付き合ってないよ?」
「え?嘘でしょ?」
彼女は有り得ないと言わんばかりに目を見開く。そんなに驚くことだったのかな?
「えっと、じゃあ拓也のことが好きとかは...」
「ふふっ、なにそれ?」
私が少し面白くて笑うと、葉瀬は何か考え始める。
「...秋大丈夫?拓也取られるよ」
「取られるって、何が?」
そう言うと何故か唸り声を上げる葉瀬ちゃん。
「...あ!秋、拓也と遊びに行けなくなっていいの!?」
「なんで?」
「だって拓也に彼女できたら気軽に遊びに行けないでしょ!」
「あぁ、そっかぁ」
「そっか!?もっとなんかあるよね!?」
「しょうがないよ、彼も大人だし。そういう日が来るのは自然なことなんだから」
葉瀬ちゃんは眉間にシワを寄せたまま、萎びた顔をしている。そんな顔してるとシワ増えちゃうよ。
「葉瀬ちゃん何か悩んでるの?相談なら...」
「私、拓也が好きだよ」
「......えっと何て?」
「秋にその気が無いなら、ベタベタしてもいいよね。ね?」
「う、うん。いいけど...?」
「ふーん、後悔しないでね?」
じゃあ私ここだから、と手を振って後ろも見ずに駅に入っていった。
「.........いい、よね...?」
私は何故か、今更になって不安になった。
お題 「本気の恋」
出演 秋 葉瀬 拓也
9/13/2024, 8:05:32 AM