空島から地上を見下ろしてみる。
緑色の木々の中に、赤茶や黄色が混ざっているのが見えた。
人間世界で言うところの、「秋」だろうか。
空島の気候は、基本的に変わらない。カレンダーを見るか、こうして地上を見下ろさなければ、季節の移り変わりがわからないのだ。
だが、季節の変化がないことを、私は寂しいとは思わない。
私の故郷が、雪の溶けることのない、山の上だったからだろう。
だから、あの滑落事故も。
私の中では、人間世界で言うところの「冬」の出来事だった。だが、実際は…私が見た新聞が間違ってなければ、「春」の出来事だったらしい。
…正直、この空島を離れるのは、今でも少しだけ怖い。
私がいない間に、空島が何者かに襲われてしまったら。ようやく見つけた居場所を、あの日と同じように失ってしまったら。…そんな不安が、頭をよぎる。
それでも…私は、空島の仲間達を信じている。
彼らの強さを、時間をかけて少しずつ…心で、理解していったから。
命日に則って花を添えるなら、白くなった大地が再び緑を取り戻した頃に戻るべきなのだろう。
だが、私達は雪鳥だ。氷と雪の世界で、雪と共に生きていく。
私達は雪と共にある存在だ。
空島から見下ろす地上が、白一色に染まったら。
花を片手に、私はそこに戻ろう。
雪に導かれて、皆が再びそこに戻ってきていると…そう信じて。
(「空島」―雪に手向け―)
11/17/2024, 12:02:41 PM