ね、歩こうよ。
君はそう言って突然タクシーを止めて、黒々と広がる大きな公園に入って行った。一緒に行くはずだった君んちまで、あと5分も乗ってりゃ着いたのに。
飲んだ後だからだりーな。そう思ったけど、君が楽しげにさっさと先を行くから渋々後をついていく。君の履いてるスカートみてーなでかくて長いパンツがホントにスカートみたいにひらひら夜の公園に舞って、なんだかおかしくなってくる。
「夜の公演なんてやばくね? 変なやついそう」
「大丈夫。俺らが1番変だから」
君はニヤッと笑って、タタタと俺んとこに戻ってきて手を繋いだ。
「おい」
「大丈夫。誰も気づかない。明かりなんかちょっとしかない。夜景もない」
確かにここはまるで闇。夜に沈んで、誰も俺たちのこと見られない。君の手少し汗ばんでる。自分から握ったくせして緊張している君が可愛い。
「それにもし誰かに見られても、俺今日スカート履いてるから『ふつー』に見える」
「スカートみたいなパンツだろ?」
「ううん。パンツみたいなスカートだよ。めくる?」
めくんない。
俺はくすくす笑って、この人並外れた変わった恋人の手をぎゅっと強く握った。
夜景さえ見えない、深夜の公園で。
▼夜景
9/18/2023, 12:30:50 PM