江戸宮

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「俺の弱くて惨めな姿みて満足した?それはそれは楽しかったでしょ、あんなに熱心に舐めるように見つめてくれたんだからさ」

隣のコイツへ嫌味を飛ばした。
気持ちの整理がつかないのかこの状況に合わないような不思議な顔をしてずっと俺を無言で眺めていた。
仕草はこんなにも愛らしいのに、コイツに見つめられた所に穴でも空いてしまいそうなぐらいその視線は鋭い。

「貴方は…どこか浮世離れした、…天使、でも時々悪魔みたいで、全てを許すマリア様みたいで、とにかく人間じゃないみたいでさ、でもね…あなたのそういう所みておこがましいけど同じ人間なんだなって」

安心した、と続けたコイツの顔に胸が痛む。
大切に誰にも見せずに閉じ込めて俺だけのものにしたいのに、同じぐらい許せなくて憎らしくてぐちゃぐちゃに壊してしまいたくてたまらなくなる。

恋はすればするだけ傷ついて。すればするほど遠くなる。
瞼の裏に張り付いた馬鹿みたいな笑顔が眩しくて、苦しくて目眩がしそうだった。

「俺の事何も知らないくせに、」

俺の事をそうやって神様かなにかだと本気で思ってるのはたぶん、お前だけだよ。
慈悲の心ですべてを許して誰でも分け隔てなく愛を振りまける神様だったらほんとうによかったのに。


『失恋』6.3

6/3/2024, 12:36:58 PM