G14

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 ハローハロー!
 こちら地球。
 宇宙のどこかにいるキミに話しかけています。

 この放送をキミが聞いているかは、ボクには分かりません。
 キミがどれくらい遠くにいるのかも分かりません

 けれどボクは、キミに呼びかけ続けます。
 どれくらいの距離があるかは分からないけど、きっと届くと信じています


 ボクは、太陽系にある地球という星に住んでいます。
 水と緑が沢山ある、不思議な星です。
 そこでボクたち人間は、いろんなものを作って生活しています。
 いろんな文化や娯楽がたくさんあります。

 キミの星はどうですか?
 ボクは、キミの星に興味があります。
 キミの星の事を聞きたいのです。
 もしこの通信を聞いていたら、お返事ください。

 キミの星は、宇宙を旅することは出来ますか?
 本当はボクの方からキミの所へ行けばいいんだけど、ボクたちはまだ地球を出るのに苦労しています。
 だからキミが宇宙に出れるのであれば、是非地球に来てください。
 会って、たくさんお話ししましょう

 もしかしたらこれを聞いているキミは、返事も出来なくて、宇宙に出れないのかもしれません。
 それは残念ですが、嘆くことはありません。
 なぜならボクがキミに会いに行くからです。

 確かにボクたちは宇宙を旅するのは難しいです。
 けれど、ボクが大人になってとても速い宇宙船を作ります。
 そうしたら、絶対にキミに会いに行きます。
 約束です。

 だからキミはこれだけは知っておいてください。
 キミは一人ではありません。
 ボクとキミは友達です。

 いつか宇宙に出て、キミに会いに行きます。
 では遠い未来に会いましょう。

 ◇

 まだ見ぬ『異星人と会う』という人類の悲願を背負って、旅に出てから一か月。
 無線機からは懐かしいものが流れてきた。

 希望に満ち溢れた幼い『ボク』が、まだ見ぬ『キミ』に送ったメッセージ。
 『キミ』に届くと信じて発信したけれど、結局返事が返ってこなかったけれど、まさか受け取りが僕とは思いもしなかった。

 この宇宙船は光より早く移動できる人類の英知の結晶だ。
 だから理論上、電波に乗せて光の速さで飛んでいくしかない『ボク』のメッセージには追いつけるけど、実際に追いついてみれば驚きしかない。

 僕は無線機を操作して、受信したメッセージを改めて宇宙に発信する。
 科学の進歩は宇宙船だけではなく、無線機の技術にも及んでいた。

 かつて光の速さでしか送れなかったこのメッセージも、今では光より早く送ることが出来る。
 こうしてもう一度発信すれば、ボクが到着する前には『キミ』にメッセージが届いているだろう。

 ごめんね、まだ見ぬ『キミ』よ。
 メッセージはまだ届いてないけれど。
 どこにいるかもわからないけれど。
 一方的な約束だけど。

 ボクは、キミに会いに行きます

12/2/2024, 12:42:13 PM