『友だちの思い出』2023.07.06
高校時代につるんでいたヤツがいる。
ガムを噛んでいるのが不良っぽくてかっこいい、とか思っているヤツだった。
実際、俺たちは不良だったし、他校の連中と喧嘩をすることも当たり前だった。
ヤツはいい家庭環境ではなかったけど、家族思いのいいやつだった。
高校を卒業して、俺は実家を継ぐため料理学校に進学。ヤツは特にやりたいこともないらしかったので、適当に就職をしたらしい。
最初のうちはこまめに連絡をとっていたが、互いに忙しくなり疎遠になってしまった。
そんなヤツと今度、同窓会で会う。
俺もヤツも三十路だ。お互いいい大人として再会するのは、成人式の時以来だ。
ヤツはどんな風になっているのだろう。
二十歳なんて高校の延長みたいなもんだから、そんなに変わってはいなかったが、今は三十歳だ。
実家のイタリアンレストランを継いだ俺と、おそらく会社員をしているであろうヤツ。
さすがに、ガムを噛みながら仕事はしていないだろう。髪も高校の時みたいにツンツンさせていないはすだ。
そんな想像を膨らませながら、皆が集まる居酒屋に向かう。
「久しぶり」
果たして、待っていたヤツは高校時代と変わらない人懐っこい笑顔をみせた。
ガムを噛んでいて、髪もツンツンさせていて。
それだけで、一気に高校時代に逆戻りをした気がした。
と同時に、ヤツとの思い出話が楽しみになった。
エピソードはたくさんある。どれから話してやろうか。
7/6/2023, 11:04:51 AM