いろ

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【冬休み】

 しなびた畳の匂いの香る祖母の家。凛と冷えた空気を肺いっぱいに吸い込んで、僕は一番奥の座敷へと向かう。
「久しぶり」
 声をかければ嬉しそうに笑って僕を振り返る、着物姿の幼い子供。小さい頃は近所の子だと思っていたけれど、僕が小学生になり、中学生になり、それでも出会った時と一切見た目の変わらないこの子が人間ではないのだと、その頃に初めて気がついた。
「今年もまた一緒に遊ぼう」
 冬休みにしか会うことのできない、人ならざる僕の友人。除夜の鐘を聴きながら君と過ごす年越しが、僕の大切な習慣だ。鞠を片手に駆け寄ってくる幼い君を、両腕で優しく抱きしめた。

12/29/2023, 4:26:55 AM