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「涙の理由」

先週から気になっていることがある。

金曜日にいつもより早い時間にゴミ出しに行ったら、収集所の前で近所の老婦人に会った。
以前、町内会の役員をやったときに何度かいっしょになったことがあるが、その後ほとんど顔を合わせたことがない。
話をするのは5年ぶり、いや10年近くになるか。

「お久しぶりですね」
「はい、お元気でしたか」

当たり障りのない挨拶を交わした後、老婦人は
「お子さんはもう中学生?」
と尋ねてきた。

「いや、もう高3です。受験生なんですよ。勉強しなくて困ってます」
私は軽い感じで答えたのだけれど、彼女はひどく驚いた顔をして
「まあ、もう高校生!」
と言ってから
「なんて早いんでしょう、あっという間ですね」
とつぶやいて、ちょっと涙ぐんだ。マスクをしているから表情はわからないが、目の下のほうにうっすら涙がたまっていく。

なんで涙?
私は動揺しながら
「ほんとですよね。子供が育つのは早いですね」
と答えて、意味もなく笑った。老婦人も目はうるませているもののいっしょに少し笑っている。
「じゃ、失礼します」
私はどうしていいのかわからなくなり、会釈すると仕事に行く道を急ぐふりをしてその場を離れた。

よその家の子供の成長が、彼女の家族の誰かを思い起させたんだろうか?
それとも、ただ単に時の流れの速さに感動した?
「どうかなさいましたか?」 そう声をかけずに、そそくさを立ち去ってしまった自分は冷たい人間なのかもしれない。

思い出すたびに、涙の理由が気になって、胸がちくちくしている。

10/11/2022, 8:55:44 AM