笹海

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 ふ、と笑った横顔が好きだ。目を伏せて零す涙が愛おしい。風に泳ぐ髪に触れたい。繋いだ手の温もりを感じていたい。
 遠い昔、幼心にときめいたあの頃から、色褪せやしないあなたへの想い。
「暑いねえ」
 困ったように笑うあなたに「そうだねえ」と返して、通学路からはやや外れた道沿いにあるたこ焼き屋を目指した。焼けたアスファルトの上を耐えきれば、ソフトクリームの乗った冷たいかき氷にありつけるはずだ。
 こんな些細な日常も、いつかは遠い日の記憶になるのだろう。いいや、寂しい訳じゃあない。いつか訪れる“その日”もきっと、あなたの隣で些細な日常を過ごしているのだろうから。

7/17/2022, 1:18:14 PM