私が蝶よ花よと愛でてきた、年の離れた妹は、齢二十にして可憐に女ほころび咲いて、愛する男のもとへ羽ばたいていった。
姉の私はただの一度も咲きもせず、朽ちてゆくだけ。それで構わない。最愛のあの子が、幸せに満ち満ちて暮らしてゆけるのであれば、私はどんな苦労も厭わない。
私たちは早くに父母を亡くし、頼れる親類縁者もいなかった。姉妹二人、手を取り合い支え合い、身を寄せ合って生きてきた。そんな妹が手を離して去ってゆくのは、とても寂しい。しかし、ともに重ねた苦労の中で固く結ばれた私たちの絆は、今でも変わらないと信じている。
妹を守り育てるという、私の役目は終わったのだ。それは安堵とともに虚しさを連れてきた。私は生きがいを失ったのだ。これから何を心の支えとして生きてゆけばよいのだろう。
働き詰めの毎日で、恋人はおろか友人も趣味もない。これから職場と家を往復するだけの単調な日々を続けていくのかと思ったとき、ふっと糸が切れてしまった。
そうして私は十年間勤めた職場を辞め、ふらりと一人旅に出た。ただ足の赴くままに、様々な土地をさまよった。
これは、そんな私の放浪記。たくさんの出会いと気づきを書き留めた、私の大切な記録。この頁を開いてくださったあなたにとって、何かしらのきっかけになれたら嬉しい。
8/9/2024, 10:15:16 AM