『紅茶の香り』
苦しくなったら、たくらみ事を。
復讐や仕返しを頭の中で企てて、その方法や手順をひとつひとつ詰めてゆく。
まずは前提から。
周囲にも復讐相手にも気づかせないやり方か、周囲には発覚せずに相手に思い知らせるやり方か、周囲にも相手にも構わずやりたいようにやるか。
それから内容と程度。
物理的にか、社会的にか、精神的にか。
物理的なら、犯罪になるほどのことか、ならないレベルか。
社会的なら、悪評程度か、職や立場を失うほどか。
精神的なら、ちょっと傷つくくらいか、立ち直れないほど打ちのめすか。
一番簡単なのは、周囲にも相手にも構わず、捕まることすら気にしないやり方だけど。
「どうしたの? 飲まないの?」
親しげなふりをして、これまで私を貶め傷つけてきた相手。
あなた今、私の頭の中で散々な目に遭うところなのよ。
ティーカップを手に取り、一口飲み込んでハッとした。喉を焼くような痛みにカップを取り落とす。
辺りに広がる紅茶の香りの向こうで、相手がニヤリと笑ったのが見えた。
10/28/2024, 4:44:00 AM