狼藉 楓悟

Open App

 「大きくなったら何になりたい?」子供の頃、よく聞かれた質問の1つだと思う。好きな食べ物はとか、どんな遊びが好きかとか、そんなのと同じような括りで質問される。
 周りの子は皆、サッカー選手とか、医者とか、ケーキ屋さんとか、極稀に動物やら無機物やらを書く子がいて。
 なんであれ、そこまで迷うこともなくパッと答える子がほとんどだった。
 高校生辺りから「大きくなったら」が「将来」という言葉に変わって、自分の進路を考えるそこそこ大事な質問に変わった。それでも、大抵の子はなにかしら書ける。
 それが不思議で仕方がなかった。
 なりたいものなんてなかった。将来なんていくら考えてもわからない。どうして「大人になった自分」を思い描けるのか。
 考えすぎなだけなのかもしれないけれど、高校卒業後の進路でその後の人生が左右されるような時代。どうしても適当にはなれなかった。
 ぼんやりと思案しながら、シャーペンをクルクルと回し弄ぶ。昨日渡された課題はまだ机の上で白紙のまま。
 問われている内容は至ってシンプル。
『子供の頃、なりたかったものは? 今、将来なりたいと思っているものは?』
 時計を見れば、もう午前2時になろうとしている。いつの間にやら1日が終わっていた。
 提出まではまだ期限があったはず。課題を終わらせるのは諦めて、シャーペンを机に置きベッドに潜る。
 きっと今日も、この問の答えは見つからない。

#27『子供の頃の夢』

6/24/2025, 5:55:53 AM