これはやばい。もう真夜中なのに。ずっと見ちゃう。終わらない。眠れないほど面白い!
深夜のリビングで、私はノートPCを開けていた。サブスクで配信されてるタイのドラマ、次の展開が気になってどんどん見ちゃう。1話終わったらノータイムで次のが始まるから止められない。
ルームシェアしてるナオは自分の部屋に入ってたぶんもう寝ている。さすがに夜中まで音出してたら迷惑だよね。部屋にテレビはなくて、ナオはあんまりドラマに興味ないみたい。どっちかっていうとバラエティ? お笑いが好きって言ってたかな。
あと1話、と思ってマグカップに口を付けたら、コーヒーが冷めてる。その冷たさでふと我に帰ると空気がひんやりしているのに気づいた。やだ、寒いかも。
「まだ起きてたの?」
声に驚いて振り返ると部屋の入り口にナオがいた。
「ナオ!? なんで?」
隠し事がバレた子どものような反応をしてしまう。
「この部屋寒くないか?」
私の態度も気にせずナオはエアコンを調整してタオルケットを掛けてくれた。
「あ、ありがと…。怒らないの?」
「何に?」
何にって…、何にだろう。
「夜中まで起きてて…、隠れて配信ドラマ見てて…」
「お互い大人なんだから、そんなこと気にしないよ。一緒に暮らしている分、一人の時間は大切にしないと」
そっか。そこはルームシェアを始めたときに話し合ったルールだ。
「見られたくない趣味だってあるだろうし。お互いね」
そうだよね。ナオにもそういう趣味があるのかな。
「あー、でも見られちゃったなー。タイの配信ドラマ見てるの」
「そんなに変な趣味かな?」
「変じゃない?」
ナオが顔を背けて言葉に詰まる。やっぱり変だと思ってるじゃ…。
「実は、私も、部屋で同じドラマ見てた…」
ナオが照れくさそうな顔を隠している。
「えーうそ! だったら隠すことなかったじゃん! 一緒に見ようよ!」
「いやいや、こういうドラマは一人で見るもんかなって」
逃げようとするナオを放さない。
「もう遅いです〜。ねえ、キエトとアスニ、どっち派? せーので言おう!」
「キエト派」
「アスニ派」
「そこは違うんだ〜、あははっ」
またひとつ、ナオと同じところと違うところが見つかった。二人だけの眠れない夜は続いていく。
12/6/2024, 12:29:38 AM