0からの思い出
俺、圭也には幼稚園、小、中学校の時に良い思い出が無い。
父は俺達を置いていって何処かへ行き、母は父の代わりに働いてくれた。
ずっと一緒だと思っていた。このまま3人で暮らし、高校生や大学生になったら1人暮らしを始めたりする。両親は少し悲しみながらも送り出してくれて、いつでも帰って来なみたいな事も言ってくれて。
そんな日々が待っているんだと思っていた。
でも小学5年生のある日、父が急にいなくなった。
幼い俺は理解が出来ず、寝るまで母に
『ねえ、パパはいつ帰ってくるの?』
と聞いていた。
あの時の母の
『いずれ帰ってくるわ。さ、圭也は寝ましょう』
と言う言葉が、その時の寂しそうな、申し訳無さそうな顔が忘れられない。
幼かった俺は母がそう言うならいつか近々帰ってくるだろうと思い寝たが、今は分かる。
あの時母は、どんな気持ちであんな事を言ったのだろう。
自分を言い聞かせる為にそう言ったのか、はたまた別の意味が込められていたのか。
あの時以来、ずっと考えているが高校生の入学式当日の今でも答えは出ない。
高校生も母の事を手伝ったりバイトをしたりして良い思い出が無いまま卒業するんだと思っていた。
だが、その考えは間違っていた。
入学式が終わり、教室に行き自分の席に座ると隣から声がした。
『あなたが隣の席の人なの?』
俺が声のする方に振り向くと、そこには美少女いた。
それが俺と隣の美少女、桜との出会いだった、そして俺の思い出が0から増えていく。
2/22/2024, 5:56:52 AM