夢月夜

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『星空』

辺り一面焼け野原。

私が住んでいた美しい街は隣国との争いで見るも無惨な光景へと変わってしまっていた。

戦争で沢山の人が、街が、村が、無くなっていく。

昔あったモノが、人が、消えていってしまう。

なのに、星だけはいつもと全く変わらず美しく空に輝いていて。

だからだろうか。余計に今起こっている事は夢なんじゃないだろうかと思ってしまう。

現実逃避……そう分かっていても昔と変わらない星空を見上げていると平和だったあの頃に戻れるんじゃないかと錯覚を起こす。目を閉じて……大切な思い出に浸っていれば全て元にもどるのではないだろうか。

「ニアリィ」

名を呼ぶ声で私は弾かれた様に我に返った。これは現実に起こった出来事だと、目を背けるなと訴える様に彼は私を真っ直ぐに見つめた。

「……分かってるわ。行きましょう」

星空の下、生き残った数人と共に私は歩きだしていった。その先に平和な未来があることを信じて。

7/5/2023, 3:11:53 PM