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「短冊どうぞー!」
駅前を通って家路を急いでいると、イベントか何かをやっていたのか、お姉さんから黄色の短冊をもらった。そうだ、今日は七夕か。
あいにく願い事もないし、好きな人もいない独り身の私にとっては良縁を願う相手もいない。どうしたものか。
無難に家族安泰と書くか?それはそれで照れるから嫌だ。ならば世界平和?…それは無難と言うのだろうか。
願い事。願いごと。ねがいごと。考えを巡らすうちに、幼い頃の記憶にタイムスリップする。
あの時私は…そうだ。《お友達ができますように》とお願いしたんだ。口下手で、上手にお喋りができなかったから。ちょっと周りの子達とは違う雰囲気があったから。
家に帰り、ボールペンを手に取る。厚紙の素材でできた短冊の黄色が、もらった時より鮮やかに見えた。
《あの子に、一人でもいいので、とっても素敵なお友達ができますように》

7/7/2023, 11:11:44 AM