hashiba

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止まない雨はないと言うが、止む前に消えた人はその統計に含まれていない。春の嵐で雨風に家が揺れるなか、彼が不意にそんなことを呟いた。珍しく感傷的で、何かにうんざりした様子だった。それなりに長くお互い生きてきた。その真意は窺い知れないが、きっと見たくないものも見てきたのだろう。投げやりにソファに寝そべる彼に、冷蔵庫から秘蔵のプリンを取り出して差し入れる。結局、最後まで立っていたものが勝ちってことかな。そう尋ねると、早速プリンに思考を釘付けにされたか「何の話?」と言わんばかりに首を傾げたからもう笑うしかなかった。


(題:明日世界が終わるなら)

5/7/2024, 7:29:47 AM