はた織

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 良い子におなりと交わした約束を守り続けて、今も良い子でいる大人がたくさんいる。
 全員同じ姿にさせるルールを守り、失敗を見つけたら叫ぶ習慣を続け、良い子になれないと駄々を捏ねて、代わりに相手を悪い子にさせる。
 いつから言われたのか。もう忘れるほどに遠い約束を、良い子らしくいつまでも守り続けている。
 愚痴を吐けば金言と褒められ、暴言を叫べば鶴の一声と決まり、クソと言えばクソである。そもそも、本当に良い子は口から脱糞をしない。
 ルールによって成長を縛られた良い子は、今もうようよとわいて出てくる。良い子になれという約束は絆に変わった。うましか者の首を繋ぐには、ちょうど良いだろう。
 歯磨きをしながら話す口元にシワが増えた。泡と唾を撒き散らしても掃除をしない。そんな奴はお前しかいないのに、よくもまあ他人を自分と同じ姿にさせるルールを守ろうとするものだ。
 歯ブラシを口に咥えたまま話してはいけませんと、誰も言ってくれなかったのか。お前を良い子にしてくれる人は、今までいなかったのだな。なら、良い子になれというルールは、いったい誰が言い出したのだ。
 己の呪縛から解き放て、馬鹿者よ。
                 (250408 遠い約束)

4/8/2025, 12:54:39 PM