とある恋人たちの日常。

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 カフェに行くと、気になっている彼女が普段仲良くしてくれる男友達と楽しそうに話していた。
 
 俺はテイクアウトで買い物に来ていたのに、ついつい聞き耳を立ててしまう。
 
 話している言葉使いも砕けていて、距離が近いように感じる。俺と話す時は丁寧に話してくれるもんな。
 
 それはそれで、可愛いと思っているんだけれど……。
 
 でも、友達を少しだけ……羨ましく思ってしまった……。
 それと、俺も仲良くしているとはいえ、相手は異性だからモヤモヤしてしまう。
 
 注文を終えて、出てくるのを待っていると、友達が席を外した。
 
 声……かけちゃおうかな。
 
 俺はほんの少し迷いつつも、今見つけましたと言う笑顔で声をかけた。
 
「こんにちは!」
「あ、こんにちはー!」
 
 柔らかい笑みを浮かべて、返事をしてくれる彼女にどうしても胸が高鳴る。
 
 本当に……気になる……だけなのかな。
 
 そんなことを心の奥底にしまいつつ、彼女の隣に立った。
 
「どうしたの、一人?」
「ううん、同期の友達と一緒にいたの。トイレ行っちゃった」
 
 同期……?
 同期!?
 
 確かに一緒にいた友達は、俺とも仲が良くしてくれる人で、正直彼女との接点が浮かばなかったから少し不安があったけれど。そうか、同期だったんだ。
 
「そうなんだ」
 
 そう答えた時、カウンターから俺の注文した番号が呼ばれる。俺は彼女に目配せをして、注文したものを受け取った。
 
 振り返ると、友達も戻ってきていて俺に気がつく。
 
「おー!! どうしたんすかー!?」
「え、これ買いにきたの」
 
 そう、手元にあるものを軽く見せた。
 
「なんか、久しぶりっすねー!」
 
 友達が当たり前のように屈託のない笑顔で俺をテーブルに促す。彼女も〝座って座って〟と目をキラキラさせているのが分かる。特にこの後に用事がある訳でもないのと……ほんの少し、関係が気になるからお誘いにのった。
 
 他愛ない会話が続く。
 彼女の肩の抜けた会話に驚きつつも、三人で楽しい時間を過ごせた。
 
 けれど。
 
 そうか、同期とはいえ、あんな話し方するんだな……。
 
 俺ももう少し距離を近くなるように頑張ろう。
 
 
 
おわり
 
 
一九九、距離

12/1/2024, 12:12:01 PM