—僕はいい子だから—
「いい子にして待っててね」
お母さんは玄関でそう言った。
「わかった!」
僕は大きく頷いた。
お母さんは最後に少しだけ悲しい顔をして、家を出ていった。
行き先はわからない。
でもさっきバッグに包丁を入れていたから、きっとご飯を作りに行ったんだと思う。
僕はいい子にして待っていた。
太陽が沈んで、昇って、沈んで……。
喉が乾けば、水道水を飲めば良いけれど、冷蔵庫には何もないから食べ物がない。
お母さん、お腹すいたよ——。
ピンポーン、とチャイムが鳴った。
お母さんだ——。
僕は急いで立ち上がる。でも、足にうまく力が入らない。
ふらふらとした足取りで玄関までたどり着いた。鍵を開けて、ドアを押した。
「は、い」
声が掠れてうまく出せなかった。
「大丈夫か、君」
「おい、救急車だ!」
ドアの向こうに立っていたのは、二人の警察官だった。
僕、いい子にしてたよ。お母さん、待ってるから、早く帰ってきてよ——。
意識がゆっくりと闇の中へ沈んでいった。
お題:待ってて
2/14/2026, 12:06:13 AM