「つい10日くらい前に書いてたのよ。『冬になったら』って。冬ネタ」
やはりこのアプリ、季節ネタと恋愛ネタとエモネタ、それから行事ネタでほぼ過半数説。
某所在住物書きはポテチをかじりつつ、スマホで文章を打つ片隅、サ終間近のソーシャゲームをオート周回していた。
最終章クリア特典にガチャ石約10連分が手に入るキャンペーンは今日まで。今日ってあと何時間?!
「ソシャゲ走ってお題投稿走って、明日師走か……」
本日最高16℃予想の東京も、明日になれば同11℃、最低5℃の急降下。
冬である。冬の筈だ。少なくとも、最低気温は。
――――――
今年の東京の冬は、週間天気の数字と店舗のクリスマス商戦広告から、つまり視覚から始まった気がする。
気温は上がって下がって乱高下するし、デマかホントか知らないけど、都内のどこかで数個だけ、桜が咲いたって聞いたような、別の県だったような。
あんなに遠くに見えてた冬が、いざ始まる数日前に、いきなり目の前に「私です」って出てきた。
明日、最低5℃らしい。最高気温も、低いらしい。
冬だ。あんなに11月に20℃とか何とか言ってたのに、東京でも、冬がはじまった。
多分(なお今年は暖冬の模様)
「たしかに今年は、『多分』と言いたくもなるな」
職場のお昼。休憩室のいつものテーブル。
誰が観てるとも聴いてるとも知らないテレビの情報番組、東京の過去の大雪に関するコメントをBGMに、
今日も、長いこと一緒に仕事してる先輩と、お弁当広げてホットコーヒー持ってきて、
コンビニのクリスマスケーキ、去年より高い気がするとか、明日から3日くらい最低5℃だってとか、
いろいろ、別に深い意味もなく、冬のおしゃべり。
「そもそも例年の『冬のはじまり』が、最近私は、どうも迷子になってしまっているんだが。お前どうだ」
トポトポトポ。
寒さと気温差とその乱高下にバチクソ弱い私と違って、最低どころか最高気温にマイナスが付いてやっと片眉1ミリ上げるか上げないかくらいの先輩が、
つまり雪国出身な私の食の救世主が、
「作り過ぎたから」って、生姜と少しコショウのきいたオニオンスープを分けてくれた。
「例年の、冬の、はじまり?」
スープを受け取って、喉と胃袋とおなかを温めて、ため息を吐く。おいしい。
「そもそも、去年の冬、どんなだったっけ」
先輩の問いに答えようとして、唇開いて視線そらして、頭の中の冬という冬を掘り起こそうとしたけど、
先輩の「例年の冬のはじまり」が迷子なように、私も最近の「11月に20℃」とかのせいで、やっぱり「冬」が迷子。
そらした視線の先には、誰が観てるとも聴いてるとも知らない情報番組。
◯年前の、5センチ6センチ雪が積もった東京の映像が映ってて、少し溶け気味の雪道を車が走ってた。
……多分これは「例年」じゃないと思う(多分)
「先輩も冬が迷子で、私も冬が迷子」
「そうだな」
「どうだったっけ。画像何か残ってる?去年の冬?」
「お前は?」
「多分何も撮ってない。先輩は?」
「参考になるようなものは撮っていない」
「冬ってなんだっけ」
「ノルマ過密地帯。クリスマスケーキ。おせち。少し進んで恵方巻き。私達の年間ノルマも、そろそろ」
「それ言っちゃダメ。言っちゃダメ……」
冬のはじまりのハナシから、そもそもの例年の冬の記憶を通って、ノルマ反対の云々へ。
あとは週末のイベントとか、最近見つけたカフェのバニラフラペチーノとか、昨日半額で勝ち取ったお刺身用のブリを背徳的に焼いてみたのとか新鮮で美味かっただろうとか。
なんでもない話題でごはん食べて、なんでもない話題でスープ飲んで、
その日のお昼も、いつもどおり平凡に終わった。
11/30/2023, 7:02:55 AM