ななしの倉庫

Open App

※もしも君が

文字を読めれば回避出来ることだった。
けれど貴族や商人くらいしか読めないのが「文字」だ。

──水源地の山で土砂崩れがあった。
水質は汚染され、一度沸騰させた水をろ過させなければ飲めないほどに。

貴族は注意喚起の看板を立てた。
その村に文字が読める者などいないと知らずに。
結果として村は全滅した。

俺の仕える貴族のお嬢様は、このどこにでもある事件に涙した。自分に変える力がないことを嘆いた。
俺に比べれば変える力がある立場だとも知らない、世間知らずのお嬢様。
もしもあなたが望むのであれば──
俺は、あなたに現実を突きつけよう。そして変革のために泥も被ってみせる。だから。
「お嬢様。お嬢様の出来る範囲で、やれる事を探してみませんか?」
どうか答えてほしい。民たちの望む声に。

6/14/2025, 9:21:15 PM