……正直、今でも信じられない。
あの人が、俺を欺いていたことが。
いや。正確には、罪を犯していたことが今でも信じられずにいた。
あの人は、本当に優しかった。
優しすぎて、ハズレを引かされたことも少なくない。
それでも、いつだって誠実で、実直で、絶対に裏切るような人じゃなかった。
……だからこそ、裏切れなかったんだろう。
優しくて仲間思いなあの人だからこそ、どちらも切り捨てることなんて出来なかったんだと、今さらながら理解する。
「貴方がいつも笑顔だったのは、本当はずっとーーー泣いていたからですか?」
そう隣に問いかけても、答えは返ってこない。
いつも隣にあった気配も、もう感じられない。
その度に、情けなく泣きそうになる。
いつだって、貴方は俺の隣にいたから。
俺が何か仕掛けたり仕出かしたりする度に困ったように、戸惑ったように、でも、何故かほっとしたように笑っていた貴方はもういないんだと嫌でも思い知らされる。
ーーーそんな何気ない過ぎ去った日々を思いながら、俺はまた正解のない問い掛けを繰り返していた。
過ぎ去った日々
3/9/2023, 2:26:18 PM