思い出の青ジャージ

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この部屋には扉がなかった。
6畳半ほどのワンルーム。
 その情報だけで夢だと悟るが、
現実的に考えるのも悪くない。

 窓は、ある。
差す陽はなく、人が行き来するには可能な大きさだ。
どうやら窓から私はこの部屋に入って来たらしい。

 壁は一面真っ白で単調にも程がある。
床はフローリングで、引っ越したての何もない部屋みたい。
それは、それであったとしたら
そこに居る権利を得ただけの、「箱」だ。

 私みたいだ。

遠い足音が聞こえる。

後悔と諦めの混じった匂いがする。

10/2/2025, 12:31:48 PM