NoName

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忘れられないのか、忘れ方を知らないのか――もしくは忘れたくないだけなのか。結局のところすべては同一の事象でしかないのかもしれないとも思う。なんにせよそこには記憶と呼ばれる残骸だけが残されていて、わたしの脳髄にはそのにおいが染みついてしまっている。それだけだった。部屋に染みついた煙の痕だとかが、待てど暮らせど魔法のようには消えやしないのと少しだけ似ている。それだけのことだったのだ。

5/9/2023, 1:54:29 PM