抹茶売りの少女

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中学3年生の私の部屋は狭い。

ベッドはない。
机もない。
ふとんがやっと敷けるくらい。
家に行っていい?と聞かれると断るくせに人様の家には上がる。
そんないやしい人間なのかもしれない。

親はただ一人。母親。
夜遅く、朝早く出ていく。
小さなアパートの小さな部屋で私は一人で過ごすことがほとんどだった。

高校に行く予定はなく就職の道を選んでいる。
うれしいことに彼氏もいるということで家は出る。
夜遅く母を待ってそのことを伝えたときは泣いて喜んでくれた。
お父さんもきっと喜んでくれるね。今まで苦労かけたね。
その言葉を受けて、少し切なくなった。

家を出た日はちょうど母の日だったからすごいきれいな旅立ちだと思う。
母はクマも減って肌荒れも減った。
外から見るとずいぶん小さなアパートだった。
母に特別なにかされた記憶はないけど、この小さなアパートのために
毎日増えていくクマがのしかかっていたと思うと、泣きそうになる。

ありがとうなんて今さら言えないんだ。
照れくさい。
また来るからね。
幸せになるからね。

ふたりではとても狭かった部屋を眺めながら
一歩踏み出した。

6/4/2023, 11:28:36 AM