hashiba

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想定外の反応を見せたかと思えば、次の瞬間には安直な罠に引っかかる。この世の人間全てがそれぞれ異なる存在である以上、人付き合いというものは一つとして同じ筋書きにならない。その中にあってなお、彼という人間は異色だった。勝利の女神を直接相手に取って勝負するような、そんな無秩序さと高揚感が常に彼との間にある。恋人となった今でもそう。柄でもないのに記念日でもないのに喧嘩もしていないのに、突然花を買って帰ってきたこともある。しかも自分以上に買った本人がひどく照れているのだから、このときはさすがに参った。筆致が読めない、どこに着地するか予測がつかない。わかっているのはただひたすらに幸せだということだけ。


(題:恋物語)

5/19/2024, 9:17:34 AM