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「おい、あまり走るな。転ぶぞ。」
「アマミヤくん。人間でも幽霊でもない "何か" がそう簡単に転ぶわけないでしょう?」
「俺には、お前が転ぶ予感しかしないが。」
俺のかけた言葉に、ふふふと笑いながら目の前のガキらしきものは森の中をるんるんとかけていった。

人間でも幽霊でもない "何か" 。
俺もつい昨日、その仲間入りを果たしたところである。
呪いから救われまた新たな呪いにかかる、悪循環。

まあそんなこと知ったことではない。
あの悪夢から抜け出せたのならそれでいい。
少なくとも、再度あの呪いにかかる予感はしないのだ。
これでいい。

そんなことを考えていたら、俺は何もない坂でつまずいた。

「アマミヤくん。考えすぎるのは良くないよ。転んじゃう。」
「お前よりも用心深い俺がそう簡単に転ぶわけないだろ。」
「私には転ぶ予感がするの。」

ガキらしきものの言葉に苛立ちを覚え、はあとため息をつきながら再び足を動かした。

人間でも幽霊でもないくせして、他人を煽るのは得意なのか。
いや、そもそも俺は人では___

そんな悪循環に陥るのを止めたのは、俺の意思でも目の前のガキらしきものでもなく、目の前にぽつんと立った廃学校であった。

「アマミヤくん、ここ。来てみたかったの。」

見覚えのある、廃れた高校。

既に隣から消え去った妻と。
初めて出会った場所。

もう一度ため息をつく。

前言撤回だ。『あの悪夢から抜け出せたのならそれでいい。』なんて。そんなわけがない。

そもそも悪循環なんて存在せず、
これは悪夢の延長線上の "何か" 。

これから先のことが思いやられる。




嫌な予感がした。




⦅2025/10/22 予感⦆

10/22/2025, 8:20:16 AM