「終わり、また始まる、」
我が盟友であるお前が天高く飛び立ったのは確か、四月のことだったか。思えば、小学生からの付き合いだったな。本当にお前はよく悪知恵の働く人間で、私も共に莫迦をしたよ。
そんな過去も、日が経つにつれて霧がかるようになってきた。果たして、私から記憶が完全に消え去るか、記憶が消える前に私が逝くか。考えずとも後者の方が現実的か。そして、時間は私の記憶から消えるだけでは満足しなかったらしい。覚えているか?公園の中央にあった枝垂桜を。アレはもう消えてなくなった。時間は「記憶からも消え、この世からも消える」がお望みだと。お前が完全に忘れ去られるのも時間の問題だろう。三十の頃に天涯孤独になったお前は尚更だろうな。
私も今年で還暦を迎える。死が私の背後に立っているかのような感覚を覚えることも増えた。そして愚かなお前は四十を数える前に逝きよった。この大莫迦者め、死に急ぐ理由はなかったろうに。
なあ、私からはお前の姿は見えん。だが、お前からは私の惨状を見ることができるだろう。ならば、聞かせてくれ。お前の目には私はどのように映っている?
若しくは、お前は私の隣にいるとでも言うのだろうか。輪廻転生が実在するのであれば、墓石の下に生えている草となっていてもおかしくはない。まぁ、草にでも生まれ変わったのなら笑い物だがな。
どうだ、お前の命は。
終わったか?
それとも始まったか?
私の「人生」は、そろそろ終わりを告げそうだ。いい加減な事を言うなとお前は言いそうだが、自分の事は自分が一番わかる。㠯󠄂て二年、といったところかな?土産話、纏めとくさ。
じゃあな、今度はお待ちかねの再開だ。
了
3/12/2025, 11:24:18 AM