未知亜

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ㅤ見たがっていたDVDと夏物のシャツをカバンに詰めて、流しの下の扉を開けた。奥からひとつのマグカップを取り出す。
ㅤ混ざり合う藍と桃の中に白い点みたいな星が光る、美術館のショップで見つけたカップだ。
ㅤ自分では手の届かない貰い物のハーブティーとか、死ぬほど疲れた夜のご褒美デカフェとか、そんなものだけを飲んだ気がする。

ㅤあの日並んで見た空も、こんな色の夜明けだった。
ㅤこのマグカップのような時間を、この先も共に過ごせたら。もしも君が、そうしたいと思ってくれるなら。

ㅤ幻想的な空の淵を、私はギュッと握り締めた。



『もしも君が』『マグカップ』

6/16/2025, 8:48:05 AM