霜月 朔(創作)

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はじめまして



月のない夜、
まるで綺羅星の様な、
貴方を想います。

心を闇に囚われ、
灰色の世の中で藻掻き、
意思を殺して生きてきました。
なのに。
貴方の微笑みを、
はじめて見た、あの日、
世界に色が宿ってしまったのです。

「はじめまして」
あの日の言葉が、
いまだに胸を締め付けます。
只の挨拶には、
意味などなかったのに。
ですが、私には。
それが始まりだったのです。

貴方を見つめるたびに、
この痛みを伴う想いが、
静かに私を蝕んでゆきます。
貴方の幸せを、願うほどに、
私は透明になってゆくのです。

穢れ切った私には、
貴方を幸せにはできません。
それが、只の臆病だと笑われても。
この手にあるものが、
余りにも、頼りなくて。
だから、何も言えません。
何も言いません。


貴方を知らなければ、
こんなにも息苦しくなることは、
なかったのでしょうか。
それでも。
貴方に出逢えたこの痛みさえ、
貴方との想い出だからと、
私は、拒めないのです。

「はじめまして」
貴方に出逢った日の私に、
ひとつ、伝えられるのなら。
そのまま、目を伏せて、
振り返らずに歩きなさい、
そう、教えてあげたいのです。

4/2/2025, 9:17:47 AM