夢路 泡ノ介

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丘の上で見つめる。
淡い黄金色の丸い別世界を見つめる。
暗闇に浮かぶ彼方の仄かな輝きは、灯りながらも決して激しいものではなかった。
私はあれを見つめている。
もうじき、人でなくなる。この機会に限り、私は人でなくなる。
何度も体験してきた。厭というほどなってきた。
だが、もう慣れてしまった。慣れは恐ろしいと聞く。まさに今、その状態に染まっている。
もういい、と思い始めた瞬間から、その恐怖に抗っていた自分はどこかへ消えてしまった。
ならば受け入れるまでだ。
他とは違う、それになる運命なら、受け入れよう。
私は見つめている。佇んでいる。
見えない一筋がそろそろ、浴びせてくる。

何もなかった頬に、焦茶色の固い毛が生えてきた。

【moonlight】

10/5/2025, 10:56:37 PM