sunrise…から始まるゲームをどこかで見たことがあるような気がした。懐かしい、僕が学生の頃は周りで音ゲーとかやっている人が結構いたから。僕は勉強に集中してそれどころじゃなかったんだけれど。そういや、新年だから恋人と初日の出見に行ったってSNSで投稿してる友達も多かったな。僕はと言うと好きな子と昨日ドタバタがあって落ち着けないでいる。落ち着けないでいるからって今日もまた店に来て、僕も職場じゃないと落ち着かないような病気にでもなっちゃったのかな。本当に彼女のことになると余裕なくてかっこ悪。
昨日あんな卑怯な事したくせに逢いに来てくれないかなってまだ期待してる。僕は馬鹿だ。それでもなんとなく外に目をやった。不意に誰かの走る足音が聞こえて通り過ぎようとしている彼女が見えた。やっぱり本能には逆らえないもので、心のままに素直に動いて彼女を追った。きっと名前を呼ぶだけじゃ振り向いてくれないから。彼女の腕をしっかりと掴み名前を呼んだ。
「り…諒…さん……っ!?」
息切れしてても途切れ途切れに僕の名前を呼んでくれる。この瞬間ですら愛おしい。
「ねぇ、いつもより走るスピードが落ちてて足元も不安定だったんだけど。今日どのくらい走ったの?」
彼女の息切れがなかなか治まらず、力が抜けたようにグラッと僕に倒れ込んできた。
「すみ…ませ…ん。ちょっと……」
迷わず彼女を抱きかかえ、僕は店へと運んだ。
少し横にして休ませている間、カーテンも閉め、水も用意した。
「ご、ごめんなさい。ご迷惑をお掛けして…」
「全然大丈夫。それより本当にどんだけ走ったの?いくら部活でも無理はして欲しくないな」
彼女は戸惑ってから決心したように言った。
「昨日の事、考えすぎて何も出来なくて!走ってもボーッとして気づいたらいつもの…2倍くらい走ってて」
昨日って、僕の事?だよな。もしかしたら僕は彼女のことを困らせてたのかもな。
「ごめん、びっくりしたよね。困らせてごめんね、嫌だったよね。僕の行動が軽率だったから」
「そ、そんな事ないです!全然諒さんはいい人ですし、私も…その、嫌じゃなくて」
分かってた。でも彼女の口から直接聞いて再び確かめられた事が凄く嬉しかった。
「それって…つまり、僕が触れても大丈夫ってこと?」
「えっと…私は諒さんのことが好きで…だから、えっと、その、諒さんだけなら大丈夫…です」
勇気を振り絞って最後まで言い切ってくれた。可愛くて素直でやっぱり調子が狂う。
「僕から告白したかったのに……///気を取り直して。蓮ちゃん、蓮ちゃんの事を一目見た時からずっと好きでした。僕とお付き合いして下さい」
「はいっ!」
新年というものはやはりめでたいものなのだろう。それにしてもまだ待とうと昨日決めたばかりではないか…僕は有言実行もままならない野郎なのか。はぁ、本当にかっこ悪。
「あのさ、僕すごい今抱きしめたいんだけど・・・」
「え、あ、や、えっと…私今走ったから汗臭いと思うからやめておいた方が良い…と思います!」
今更そんな事まで気にしているのか。なんでそんなに可愛いかな…
「ダメ。我慢出来ない」
抱きしめた時、いつもより強くラベンダーが香った。昨日は添えるだけだった手が僕の背中をポンポンと撫でた。
「いい匂いする…」
「えぇっ!?笑 なんか諒さんおっきい子供みたい」
優しく笑った顔。胸の辺りが温かくなってつい口元が緩んだ。
「……」
「ん?どうしたの?」
「きょ、今日はキス、しないんですか?」
赤面…す、好き!あー可愛さの過剰摂取で死っぬ
「して欲しいの?」
「初めてだし、なんか他のカップルさんってそういう事するって聞いた事があるから…その」
「そっか。蓮ちゃんにとって僕は初彼氏だもんね。あー嬉し。そんで、蓮ちゃんはキスして欲しい?」
「はいっ…///」
ギュッと力を入れて目を瞑る姿もやっぱりまだ子供っぽくて愛らしかった。
「力抜いて」
囁くと潤む彼女の瞳を見てふと思った。
(あれ、これ俺本当に我慢出来ないかも)
そっとキスしたらまた嬉しそうに微笑んだ。この上ない幸せが今僕を包んでいる。
「諒さん。なんか色々と初めましてで申し訳ないんですけど、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
新年明けましておめでとう。僕の幸せも皆さんに分けられますように。
題材「日の出」
日の出の題材とあまり関係していなくて申し訳ないです笑
1/4/2025, 5:25:59 AM