憂一

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『初恋の日』

1993年の春、桜の散り始めた頃に君と僕は出会った。
授業を抜け出して屋上で昼寝をしようと思って3階からの階段を登っていた時、君に声をかけられた。
「すいません、職員室はどこですか?」
転校生だった君は迷っていたようで、そんな君を見て僕は、職員室を探して3階まで上がってくるのは不思議な人だと思った。
職員室まで君を送り届けた頃には興が削がれたので、大人しく僕は教室に戻ることにしたのだった。
放課後になると、君は僕の元を訪れた。
「すいません、三宮駅まで連れて行ってくれませんか?」
迷ってばかりの人だと思った。行先は同じだったので、今度も連れていくことにした。

君を連れ回して、今日で13年が経った。
今思うと、僕が君に連れ回されていたようで、本当のところは君が僕をいろんなところへ連れて行ってくれていたような気がする。

5/7/2024, 11:14:27 PM